25人目のゲストは作家、本橋信宏さん。
profile
本橋 信宏(もとはし のぶひろ)
1956年 4月4日生まれ。
埼玉県所沢市出身。
早稲田大学政治経済学部卒業。
作家。
小学校1年生の時、「死んだ犬」というタイトルで作文を書いたら
先生から誉められ文章を書くオモシロさを知る。
読書家で夏目漱石や江戸川乱歩など文学作品に触れ、
小学校6年生の頃には小説を書き始める。
中学校生のときは成績も優秀でクラスの上位になるが、
途中で勉強をするのをやめてしまう。
記念受験で受けた難関、川越高校に運も味方し合格を果たす。
しかし、川越高校に合格すると、同級生のレベルが高すぎるので
進級できるのかと不安になる。
ただ、人に勉強する姿をみせるのが嫌で授業をさぼっては喫茶店に行き、
参考書をとりだし勉強を始めるほど。
受験のとき、早稲田大学に入って中退し作家になろうと決める。
受験前に、交通事故にあうものの、
気を取り直し早稲田大学を受験し見事合格。
大学では企画系サークルに入り、
甲斐バンド・コンサートの企画やテレビ出演などを繰り返し、
まだ無名時代のテリー伊藤さんと知り合う。
卒業後は、テリー伊藤さんがいた制作会社に入社するものの2ヶ月で退社。
イベント制作会社を経て、
1980年9月、24歳で念願のフリーランスになる。
1981年4月、ミリオン出版社から「ザ・キャンパス」で作家デビュー。
1983年、新英出版の『スクランブルPOHTO』編集長になるが
半年で廃刊の憂き目にあう。
1984年、物書き業をやりながらクリスタル映像で広報や作品制作に携わる。
1988年、ダイヤモンド映像の広報、プロデューサーに。
1991年、文筆業一本にもどる。収入は半分以下に。
完全復帰後、著作を相次ぎ発表。
私小説的手法で壮大な庶民史を描くことをライフワークとしている。
著書
『ザ・キャンパス』ミリオン出版社 1981
『キャンパスの悪女たち 』ミリオン出版社 1982
『キャンパス薔薇色講座』青年書館 1984
『「全学連」研究 :革命闘争史と今後の挑戦』青年書館 1985
『会社訪問する直前に読む本』ベストブック 1986
『裏本時代』飛鳥新社 1996・現在幻冬舎アウトロー文庫
『修羅場のサイコロジー』講談社 1997
『アダルトビデオ 村西とおるとその時代』飛鳥新社 1998
・現在『AV時代』幻冬舎アウトロー文庫
『新・AV時代 悩ましき人々の群れ』文藝春秋 2010
『悪党ほど我が子をかわいがる』亜紀書房 2005
短編小説集『フルーツの夜』河出書房新社 2001
・現在幻冬舎アウトロー文庫。
『風俗体験ルポ やってみたら、こうだった』宝島SUGOI文庫 2009
『東京最後の異界 鶯谷』宝島社 2013・現在宝島SUGOI文庫
『迷宮の花街 渋谷円山町』宝島社 2015
『上野アンダーグラウンド』駒草出版 2016
『全裸監督』太田出版 2016 など
本橋信宏さんが作家になった理由!
本橋信宏さんとヨウメイ
「村西とおる監督について書かれた続編、
『全裸監督』が発売されたの知ってるか?」
渋谷のいかがわしい通りを歩いている時に
急にたかっしーが聞いてきた。
「え!!!続編が発売されたんですか!?」
「ついに完結するらしいぞ!!
ただ、本が分厚いからまだ買ってないけど…」
「え、そうなんですか?全然知らなかったです」
つ、ついに発売されたか!!!
『裏本時代』『AV時代』に続く、
村西とおる監督について書かれた
本橋信宏さんの最新刊『全裸監督』。
ヨウメイは本橋さんの続編が発売されるのを
一日千秋の思いで待ち続けていたのであった。
ただ、たかっしーに言われるまで、続編を書かれていたとは
夢にも思っていなかったのであった。
これだけ、SNSなどが普及して、
調べようと思えばいつでも調べられた。
村西監督のことは逐一気にしていたが
本橋さんのことは完全にノーマークであったのである。
本橋さんにお会いしたら口が裂けても言えない
お話なのであるった。
「ただ、本橋さんの新刊、分厚いんですよね!?」
「定価2、400円するらしいぞ」
「ちょっと高いですよね!」
いかがわしいお店の前で立ち止まり一瞬考えたヨウメイであった。
決してお店に入ろうかどうか迷ったわけではないことを
ここにつけ足しておく。
新刊『全裸監督』が発売された時の衝撃を
暴走するエヴァンゲリオン初号機をみた
冬月コウゾウ風にたとえるなら、
「この先に『全裸監督』の購入が、
ヨウメイを救う方舟となるか、
ヨウメイを滅ぼす悪魔となるのか。
結論はヨウメイの財布にゆだねられたな」である。
2、400円ごときで迷っている場合ではないのである。
2、400円で人生が変わるかもしれないのである。
たかっしーと別れたあと、すぐに書店へ突っ走り
『全裸監督』を購入するヨウメイがいたのであった。
なぜ、村西とおる監督のことが書かれた
『全裸監督』にヨウメイがこれほどまでこだわるか
少し解説することにしよう。
本橋さんの著書、『裏本時代』と『AV時代』に出会ったのは
8年ほど前に遡ることなる。
深夜、汚いビルの奥につくられた編集室。
目の前には最新鋭のMac proと液晶モニター。
ヨウメイの背後には、炊飯器とお米の袋が散らかっている。
右を向けば、1mぐらいのところに
フロムソフトウェアの傑作ゲーム「ブラッドボーン」
に登場する「聖職者の獣」のような親父が
眼を合わせるたびに「おまえらは邪魔だ」と
毒を吐きかけてくるのであった。
そんな劣悪な環境の中で、左を向くとたかっしーが
1冊の本を読んでいた。
きっかけは、またしてもたかっしーであった。
「ヨウメイ、『裏本時代』って本しってるか?」
「なんですか? 『裏本時代』って!?」
「今途中まで読み進めたけどおもしろいわ。
歌舞伎町のアンダーグラウンドの話で
無修正のエロ本が販売されていたことが
詳しく書いてあって絶対読んだ方がええぞ。」
「えーそうなんですね。」
それならちょっと見せてくれればいいのに
と思ったがたかっしーは見せてくれない。
ヨウメイに話しながら全く本から目を話さないのである。
『裏本時代』タイトルだけでも気になる。
どんな悪いことが書いてあるのだ!?
見たことがないものと、知らないことには
常に興味をもつヨウメイである。
それに、エロいことが絡んできたのであれば
そこに食いつかない輩はどあほである。
「では買って読んでみます。」
と返事をしてもたかっしーは
全く本を見せてくれようとはしなかったことを
ここに追記しておく。
すぐに文庫になっていた『裏本時代』を購入した。
本を購入するときに
タイトルで躊躇することは全くないヨウメイである。
躊躇するのはレンタルDVDでとんでもないタイトルが
ついているものを女性の店員に出す時だけである。
『裏本時代』に登場する人物は、草野博美さん。
1980年代、裏本の制作、販売に携わり
北大神田書店グループをつくり上げ、
全国のお父さんの股間を熱くする。
裏本でひと財産を築き、最後には全国に48店舗、
その会長にまで上り詰めるのであった。
もともとは英会話教材や百科事典のセールスマンで
優秀な成績をおさめたにもかかわらず、
職を変えインベーダーゲームの設置・販売で大成功し
ひと財産を築く。
そして、ビニ本に出会ったことがきっかけで
裏本の制作にのりだすのであった。
ここで知らない方の為にビニ本と裏本について
少し解説を入れることにする。
ビニ本とはビニールに包まれたエロ本のことで、
中は当然のことながら修正がかかっている。
しかし、恐るべきは値段であった。
1000円や、2000円などと
非常に高価な上に、中身が見えないのである。
CDのジャケット買いと同じで表紙だけで購入しなければ
ならない非常に危険な代物であったのである。
当時、ビニ本とならび、自動販売機で売られているエロ本は
自販機本とよばれて、人通りの多い歩道に設置されているので
なかなか夜でも買うのが難しかった。
なぜなら、誰がどこで見ているかわからないので
購入するには非常に危険を顧みるのである。
知人などに見つかろうものならあっという間に
村中にうわさが広まってしまうおそろしい代物であった。
そして、中身は修正が入っている上に、
とんでもない代物を掴まされる可能性もあるのであった。
そして、とんでもないものを掴まされたからといって
文句を言っても訴える先がわからないから
泣き寝入りするしかないのであった。
うって変わって、裏本はというと当然のことながら
修正が入っていないのである。
ということはつまり、
日本の法律で修正の入っていないエロ本を売買するということは
捕まることを意味するのであった。
当然のことながら、裏本を制作し販売した
北大神田書店の会長、草野博美さんも
警察から指名手配をくらい姿をくらますのであった。
会長のすごい所は、裏本販売だけでなく
写真隔週誌「スクランブル PHOTO」を
創刊するのである。
その編集長についたのがなんと、
『裏本時代』の著者、本橋信宏さんなのであった。
しかし、週刊誌「スクランブル PHOTO」を
創刊したまでは良かったのだが
わずか10号で廃刊に追い込まれ、
指名手配中だった会長も逮捕され有罪判決が言い渡される。
草野博美さんの人生がリアルに描かれ
笑ってはいけないのだが笑ってしまう。
とにかく読んでいておもしろすぎるのである。
これが本当に実話かと思うぐらいとんでもない
人生を歩んでいる会長、草野博美さんであった。
そして、保釈され出所された草野博美さんが
名前を村西とおるに変え、アダルトビデオの制作に
全くのど素人の状態から参入していく姿が描かれたのが
続編にあたる『AV時代』なのである。
廃刊においこまれた週刊誌「スクランブルPHOTO」の
編集長を担当していた本橋さんも
また村西監督から声をかけられ
今度はAVの制作に携わって行くのであった。
自分のお金を持ち出してまで
週刊誌を刊行し続けようとした本橋さん。
しかし、隔週誌「スクランブル PHOTO」は廃刊になり
編集長であった本橋さんは路頭に迷う。
それにも関わらず、どんな気持ちで
また一緒に仕事をされる気になったのだろうか?
気になるのである。
そして『AV時代』ではまたしても波乱万丈の
村西監督の人生が描かれていたのであった。
クリスタル映像でAV監督になり、
ハワイで撮影中捕まり、求刑370年。
また、ダイヤモンド映像を設立し、
先を見越した通信衛生放送事業に参入し、
借金50億の負債を抱えて会社が倒産するのである。
借金50億。
とても個人では返せる金額ではない。
がしかし、借金を苦にして村西とおる監督は
自殺するわけでもなく正面から向き合って
返済にのりだすのであった。
借金をしても別に死ななくていい。
村西監督の波瀾万丈の人生を描いた、
本橋さんの本から学んだのであった。
言わずもがな、たかっしーとヨウメイにとって
心の支えとなる2冊の本、
『裏本時代』
『AV時代』
となったのであった。
この本に出会わなければ、
ヨウメイは貯金が底をついた時、
完全に路頭に迷いくたばっていたにちがいない。
ないものは借りればよいのである。
見栄をはっていても仕方がないのである。
ありませんと素直に言ってしまえばいいだけであった。
それか多摩川のろびんそんさんに
教えてもらったように0円ハウス生活をするかである。
何か困って落ち込んだ時があっても、
下をみれば借金50億の負債を抱えた村西監督がいる。
言い方は悪いのかもしれないが、
人は下を見れば踏みとどまれるものである。
電車へGOなどと全く思わなくなったのである。
村西監督にお話を聞いてみたいのもあったが
いつかは本橋さんにお会いして
お話を聞いてみたいと思うようになったのである。
ただ、この本に出会ったときはまだ、
本橋さんの写真もでてなければ
どこにいるかも全くつかめない謎の人物であった。
しかし、ドキュメンタリー映画
『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』に
出演されている本橋さんを見かけたのであった。
その時は、スーツ姿に、リーゼントで出演されている
姿を拝見し、とってもおっかない人だと
ヨウメイの眼には映ったのであった。
きっと、タカとユージほどアブない人に違いない。
しかし、居場所と連絡先が全く分からないのである。
そして、さらにヨウメイに追い打ちをかける
出来事が起こったのであった。
「本橋さんにインタビュー
お願いしようと試みているんですが」
とその筋の人に相談したところ
「村西さん危ないひとだから、一緒にいる本橋さんも
危ないんじゃないの。ヨウメイやめといたほうが
いいんじゃないの」
と言われて一瞬こころが揺らいだのであった。
しかし、あきらめられるものではないのである。
どうしても、本橋さんにお話を聴きたいからである。
なぜなら、本橋さんの最新刊『全裸監督』のなかで
ヨウメイにとって心の支えであった
何があっても死なない村西とおる監督が
自ら命を断とうとしたことが書かれていたからにあった。
怖い人たちに車でダムに連れていかれ、
ジャンプすればチャラにしてやると言われても
生きることに執着した村西監督。
懲役370年を言い渡されても
生きて日本に帰って来た村西監督。
そんな村西さんがなぜ一瞬でも
弱くなってしまったのか?
ヨウメイは読んだ時、非常にショックを受けたのであった。
村西監督のことをなんとしても本橋さんに聞かなければ。
と言っても教えてくれるかどうかもわからない。
そんな時に、本橋さんについての
新たな情報を手に入れたのであった。
本橋さんの書籍「悪党ほどわが子をかわいがる」である。
それまでのヨウメイは本橋さん=悪い人と
いうイメージをいだいていた。
なぜなら、スーツにリーゼント。
鋭い眼光。
しかし、そんな本橋さんが、
子育てを一生懸命している姿が
エッセイの中に出てくるのである。
しかし、子供さんが生まれるまえは、
「疾走する愛を信じる!?」
と問いかけジュリエット・ビノッシュを追いかけた
「汚れた血」のドニ・ラバンデはないが
40代を前にして死に向かって疾走している感の本橋さんが
本の中から読み取れたのであった。
というかヨウメイは勝手にそう思ったのである。
それまでは村西監督のことを本橋さんに伺おうと思っていたのだが、
ヨウメイの興味は人としての本橋さんに向いたのであった。
なぜなら、子育てを通じて生きていくための
ヒントが『悪党ほど我が子をかわいがる』には
はたくさん出てくるのであった。
本橋さんとは一体!?
どこかに本橋さんはいないか?
とおもっていたらなんと
ホームページがあったのである。
もっと早くさがせ!
これは連絡をとるチャンスである。
ちゃんと調べないところがヨウメイのダメなところである。
すぐに連絡をとると
取材OKのお返事が返って来た。
とてもらっきーである。
メールでやり取りをしていると
どこでも参りますよとのメールが返ってきたのであった。
しかし、この事実を鵜呑みにしてはならない。
なぜなら、それこそ落とし込まれる元になる
かもしれないからである。
後になってわかったのだが、本橋さん、
本当に散歩が好きなだけであった。
それに狭山丘陵のほうに思い出があったみたいで
来られたい気分であったみたいである。
どこかインタビュー場所はと思って探してみると
渋谷にいいカフェがあった。
そこをインタビュー場所にとお願いすると
OKのお返事が返ってきた。
インタビューを伺う前にちらりとでも本橋さん
のお姿を見ておかなくてはならないと思ったが、
村西監督とのトークショーは完売でチケットをとることが
出来なかったのである。
あとはぶっつけ本番で話すしか無くなったヨウメイである。
本橋さんは、ヨウメイを救う方舟となるか、
ヨウメイを滅ぼす悪魔となるのか!?
結論は…
「寒いですね〜 お待たせしました。」
満面の笑顔で本橋信宏さんがヨウメイの前に現れた。
この後、3時間も寒いテラス席でインタビューを
受けることになるとも知らずに…
本橋信宏さん_前編_1 41分
本橋信宏さん_前編_2 45分
本橋信宏さん_中編 65分
本橋信宏さん_後編 30分